春夢

氷華さんのところで開催中「桜祭」参加作品です!



薄紅色の世界で少女は立っていた。
微かな風に白いワンピースがふわりと踊る。
少女は真っ直ぐに僕を見ていた。
君は、誰?

暖かい風が通り過ぎていく。
「広崎!」
「ああ、おはよ」
「テンション低いなぁ。もっと上げてけよ」
「いつもこんなもんだろ」
下駄箱に靴をしまい、二人は教室へと向かう。
慧達の教室は校舎に隣接されたプレハブだ。学校側は新校舎の建設を予定しているとの事。慧達がその新しい校舎に入れるかは分からないが、なるべく早く校舎は建てて欲しいものである。外の廊下は雨の日に困る。
「あれ?」
廊下に落ちているものに目を向ける。
「どうした?」
「桜の花びらだ。もう散ってなかったか?」
「あぁ。向こう一本咲いてんだよ。ここまで流れてきたんだな」
「ふぅん」
風にのって、小さな欠片がまた一つ慧の前を通り過ぎた。

その日から同じ夢を見るようになった。


また、彼女だ。
同じようにただ立っている。
どうして、そんな顔をするのだろう。
夢じゃなくて、現実で会いたい。
僕に何かあるのかと。
待っているのかと。
夢はいつも、朧気に消え去ってしまう。

「広崎。起きなさい」
突然視界に広がった景色では、先生が隣に立っていた。
「あ」
「授業中よ」
黒板では前に立たされた生徒が問題を解いている。
「すみません…」
「ちゃんと授業を受けなさい」
溜め息ひとつもらし、先生は教台へと戻っていった。

「最近、寝てること多くなったな」
「そう?」
休み時間、話しは慧が居眠りで怒られたことだ。
「俺はしょっちゅう寝てるけどさ、広崎いつも真面目に聞いてるだろ」
「真面目にってわけじゃないけど」
テストで困るのが嫌なだけである。
「成績上げといて損は無いだろ」
「そりゃそうだけどさ。まぁ、そんな広崎が寝てるってのが珍しいって事。それも頻繁に」
それは慧自身不思議に思っている。
ただふっと気持ちが違う場所に行ってしまう。
夢の中へと入っているのだ。
舞い散る花の中で立つ少女は時々寂しそうな顔をするようになっていた。
あの振っている花は。
「さくら…」
知らず言葉が零れてしまった。
「あの話か。確かにもったいないよなぁ」
「あの話って?」
返ってきた返事に戸惑った。それは相手も同じらしく
「桜の木が切られるって話だろ?仮の校門を作るからっていう」
「聞いたことないけど」
「ホームルームで言ってたぞ」
ちょっと呆れ顔だ。
「その話じゃないなら、なんで言ったんだよ」
「いや、特に何も考えて無かった。話してたのが頭に残ってたのかな」
「そっか」
言葉では言いながらも慧はそうではないことを知っていた。
あの夢の中で降っているのが桜の花だからだ。
もしかしたら、あれは。
慧の思考に一つの考えが頭をよぎった。


ひらひら降り続く世界で、彼女はいた。
誰かを待っているかのように。
「ここにいたんだ」
慧はあの切られる予定の桜の木にいた。
理由なんて無く、ただもしかしたら会えるかもしれないと思っていた。
ようやく会えた。
慧は桜の木にたたずむ彼女に近づこうとする。途端強い風が慧を押し返した。
「来ては行けないって事?」
彼女は黙ったままだ。
「夢をずっと見てた。君に会いたかったんだ」
「わたし貴方を喚んだ。喚びたくなかったのに」
初めて聞く彼女の声は、かぼそいながらも鈴の音のように綺麗だった。
「どうして?」
「貴方がわたしの贄だから」
贄?
「もう私には力が無い。だから、本能的に貴方を喚んでしまった」
「貴方の命をわたしの糧とするために」
彼女の顔を見る。泣きたくて、悲しくて、でも堪えている表情。
慧は少ずつ近づいていく。風は和らいでいた。
こんな顔が見たいわけじゃない。笑顔が見てみたいのに。
「構わないよ」
笑顔が見られるなら、それで彼女が助かるなら。
彼女の顔が一層歪んだ。
「わたしは切られるのに?」
「全てが無くなる訳じゃない。いつかまた、花は咲かせられるだろ?」
こぼれ落ちた滴が地面に吸い込まれる。
慧は彼女に手を伸ばした。

心の中で嬉しいと感じている自分がいた。
貴方の命を奪うというのに、わたしを選んでくれる事。

二人の手が重なった。

貴方と共にわたしも眠るわ。
ずっと、一緒に。

*あとがき*
校舎の記述は、通ってた中学の事を書きました。
ベランダが廊下になっていて、一年生が2クラスだけプレハブ組。
教室内に水道がついてるのが便利だけど、水浸しになったこともあった。
上履きのまま雪合戦とかしてたり。
今は新しい校舎なので無いですけどね。

今回は企画に参加させて頂きました。ありがとうございます。
バットなんだがハッピーなんだがいまいち良く分からない作品になってしまいました。
私が書くのは大体がそうだけど……。


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ぐはぁ(吐血)
ここまでストライクなの久々です。←
ふたりのその後が気になります…!
素敵な文章ごちそうさまです。

企画にご参加ありがとうございました。
  • |2011.04.30(Sat)
  • |氷華
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  • EDIT

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こちらこそありがとうございました。
どう書こうと考えてる時間が楽しかったですe-420

また機会がありましたら参加させて下さいね。
  • |2011.04.30(Sat)
  • |木内ことり
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  • EDIT

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木内 ことり

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